■
◆ プラストキノンの酸化を、どのように評価するか 〜クロロフィル蛍光解析の導入〜
ここで、少し複雑ですが、クロロフィル蛍光解析で得られるパラメータを導入したモデルを紹介します。
クロロフィル蛍光解析は、現在、非常にSophisticatedな状況にある機器が多く市販され、光合成の全くの素人、またクロロフィル蛍光に関する知識がなくても、測定後の数値が得られている雰囲気です。
実際にデータを得た場合、光合成における光エネルギーの利用を理解するためには、非常に慎重な解釈を要求するというのが実情でしょう。私自身、この点が非常に面白く、興味が尽きないのですが、、、、、。
長年、クロロフィル蛍光解析を行ってきている中で、PQの酸化還元状態を評価するモデルにたどり着くことができました。このモデルは、多くのクロロフィル蛍光パラメーターを統一するものであり、これまで個々に語られ、その因果関係に迫ることができなかったものを、一挙に解決することに至りました。その詳細は、私が執筆した、携わった2009年Plant Cell Physiology、また2009年光合成学会誌をご参照ください。以下、概略を紹介します。
私は、クロロフィル蛍光パラメーターNPQ、Fv/Fmおよび F(PSII)がPQの酸化還元レベル(qL)を支配するものとし、式(1)の導出を行い、これらのパラメーターを1つのモデル式の中に組み込むことに成功しました(式(1))。
qL = ( F(PSII) / (1 - F(PSII))) * ((1 - Fv/Fm) / (Fv/Fm)) * (NPQ + 1) (1)
この式は、前述のクロロフィル蛍光パラメーターをすべて取り入れたものです。これにより、個々のパラメーターの値の変動が、相互に関係づけられるようになりました。
qLのモデル式(1)を解釈します。葉緑体チラコイド膜光合成リニアー電子伝達反応が促進すると、 F(PSII)が増大します。これは、qLの増大をもたらし、予想されるように、プラストキノンが酸化されることを示します。このとき、NPQの増大を伴うと、さらにプラストキノンは酸化されます。そして、Fv/Fmの低下もまたqLを増大させます。
■