植物栄養学研究室 〜三宅親弘のホームページ〜

4.  植物の日焼け




◆ 植物の日焼け

植物の日焼け、なんて書くと一体なんぞやということで首を傾げる方もおられることかと思います。この言葉は、私の大学院時代の恩師(京都大学名誉教授・浅田浩二先生)により語られたものです。一体、みなさん、身の回りの植物をごらん、あるいは想像してください。この時期(初夏から晩夏)、特に真夏の炎天下、植物・作物は、青々と葉を茂らせ、元気良く生活しているでしょう。私たち人間が、炎天下に、半時間でもいれば露出している皮膚が日焼けし、時にひどい場合はやけど症状になったりします。これは、みなさんがよくご存じの紫外線による活性酸素障害、つまり酸化障害、による細胞ダメージの結果であります。このようなダメージが長期化、蓄積すれば、皮膚がんなどの恐ろしい状況が私たちを待ち受けているわけです。

ところが、一転、植物をみると頼もしいですね。人間と異なり、日焼けすることもなく、すくすくと生活しています。これは、雑草しかり、農作物しかりです。その結果、多くの農作物は、特に、イネは穂をつけ秋には私たちに多くの実りを与えてくれます。このような姿を見れば、植物は、いともたやすく太陽光の下で生きているんだろうと思えるでしょう。

しかしながら、内実は、そうではありません。植物も必死のパッチで、この世の中を生き抜いています。なんと、普段の植物の生育は約2割に抑えられているという報告があります。これは、アメリカのBoyerのグループが報告しているんですが、作物の年間最大収量(特定の地域で得られたもの)および平均収量(全米平均)を比較すると、最大収量は平均収量の約4倍に達するそうです。つまり、約7割5分の収量損失があるわけです。その内訳をみると、自然環境下でもたらされる要因(環境要因)がその原因となっています。環境要因の中で主要なものが、水不足・塩害・低高温などによる生育不良であります。このような環境下(生育不良をもたらす環境要因をストレスと呼びます)で、植物・作物が生育すると、一見正常そうに見えても、やはりその生育は抑制されているということになります。