植物栄養学研究室 〜三宅親弘のホームページ〜

6.  葉緑体での活性酸素生成




◆ 葉緑体での活性酸素生成

植物は、太陽光の下で光合成をおこない、生活しているわけですが、気孔が閉鎖するような環境ストレスにさらされると、二酸化炭素(CO2)が葉の中に入ることができず、CO2は光合成に利用されなくなります。これは、非常に危険な状態です。光合成が利用する光のエネルギーは非常に高く、それがCO2固定に利用されないとなると、葉緑体が集めた光エネルギーは、植物にとって今度は不必要なものになるんですね。光がもつエネルギーは行き場がなくなり、身の回りに豊富にある酸素(O2)へ流れます。この結果、O2はエネルギーを受け取り、反応性に富む活性酸素へ変化してしまいます。

ここで生成する活性酸素は、葉緑体内でのO2への光エネルギー移動形態によりいくつか生成するわけです。たとえば、スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどです。これらの活性酸素が蓄積する、おそらくすぐに蓄積してしまいます、と葉緑体内の細胞成分が活性酸素により酸化障害を被ってしまいます。つまり、植物で「日焼け」が生じてしまうわけです。なるほど、身の回りの植物は、確かに緑色を保ち生育していますが、雨が降らない日が続くような気象状況ですと、見る見るとその色を失い、茶色を呈し、枯死していくのが目に入ってきます。これは、作物に限らず、花壇の植物、鉢植えの植物でも水やりを怠ると、枯死するのと同じことです。このように、植物は、生きていくために光合成に必要な光エネルギーを体内に受け入れているわけですが、それは非常に生きるか死ぬかという危ういバランスの上に成り立っているんですよね。