植物栄養学研究室 〜三宅親弘のホームページ〜

3.   葉緑体工学によるストレス耐性植物の作出




“葉緑体工学によるストレス耐性植物の作出”

葉緑体での活性酸素制御を目的に、活性酸素の消去促進および生成抑制機能の増強をねらって、葉緑体形質転換植物を作出しました。葉緑体形質転換によりタバコ葉緑体に紅藻Galdieria partita由来APX(Gal-APX)を過剰発現させた葉緑体では、光合成が抑制される条件下でも、野生型タバコ葉緑体と比べて組換え体の葉緑体は酸化障害を被らず、光生成したH2O2を完全に消去し、活性酸素消去促進に成功しております。

また、CEF-PSI強化を目的に、シロイヌナズナFdを、葉緑体形質転換によりタバコ葉緑体に過剰発現させました。この組換え体(Fdタバコ)の生葉では、CEF-PSI活性が強化され、NPQ増大にいたっております(図C、D、E参照(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)にて行った研究です)。

                 ◆ 図C CEF-PSIの強化 ◆



           ◆ 図D CEF-PSIによるPQ還元促進 ◆



            ◆ 図E CEF-PSI増強によるNPQ強化 ◆



つまり、CEF-PSIのin vivoでの律速段階がFdにあり、そしてCEF-PSIの強化に世界で始めて成功するとともに、実際にCEF-PSIがNPQ誘導の分子的実体であることを世界で始めて証明することができております。この結果は、葉緑体での活性酸素生成抑制に成功したことを示すものであります(なお、この成果は、2007年7月国際光合成会議(英国・グラスゴー)での招待講演において、世界に発信しました)。