■
“活性酸素生成抑制メカニズム解明”
葉緑体チラコイド膜光化学系I(PSI)循環的電子伝達反応(CEF-PSI)は、PSIで光還元されたFdがチラコイド膜プラストキノン(PQ)へ電子を再供与することにより生じるPSIを中心とした電子伝達反応であり、チラコイド膜を介したプロトン勾配(DpH)形成にいたります。その生理的役割として、光合成に必要なATP供給、また光合成にとって過剰な光エネルギーを熱として安全に散逸するNon-Photochemical Quenching (NPQ)機構の誘導が提唱されています。NPQは、その機能から活性酸素生成抑制能をもちます(図B)。
◆ 図B 「活性酸素生成抑制システム」 ◆
ドイツ・ビュルツブルグ大学にて、葉緑体チラコイド膜を用いて、CEF-PSIを触媒する候補が電子伝達タンパク質シトクロム b-559であることを、分光学的解析により明らかにしてきました。次に、植物生葉in vivoで、CEF-PSI活性を評価するシステムを構築し、CEF-PSIが、強光、低CO2条件で高い活性を示すこと、そしてCEF-PSIがNPQと高い相関を示すことを見出し、CEF-PSIがNPQを誘導する分子メカニズムであることを提唱しております。これらCEF-PSI機能発現の条件は、まさしく活性酸素が生成する条件であり、CEF-PSIがNPQを誘導することにより、活性酸素生成を抑制していることが示唆されます。さらに、強光条件下で生育した植物が、高いCEF-PSI活性とNPQを持つことを明らかにし、CEF-PSI活性が生育環境により制御され、活性酸素ストレスを緩和していることを見出しました。
■