植物栄養学研究室 〜三宅親弘のホームページ〜

1.   活性酸素消去メカニズム解明




“活性酸素消去メカニズム解明”

葉緑体チラコイド膜にアスコルビン酸(AsA)ペルオキシダーゼ(APX)が結合して存在し、葉緑体で光生成する活性酸素、特に過酸化水素(H2O2)を実際に消去・無毒化することを示すと共に、APXをチラコイド膜から単離精製し、APXが自身の基質であるH2O2により失活すること、そのメカニズムを明らかにし、このことが原因でこれまで見出されていなかったことを示してきました。さらに、APX反応の結果、生成するAsAの酸化物、モノデヒドロアスコルビン酸ラジカル(MDA)がチラコイド膜光化学系Iで、フェレドキシン(Fd)によりAsAへ還元され、APXの基質がチラコイド膜上で再生されることを見出しました。さらに、葉緑体に存在するフラビンタンパク質がチラコイド膜光化学系Iで光還元され、酸素を還元することにより活性酸素を生成するメカニズムを明らかにしております。この結果、葉緑体チラコイド膜活性酸素生成部位、光化学系I近傍、にAPXおよびFdによる消去システムが存在し、効率的に活性酸素を消去しているメカニズム(The Water-Water Cycle )を提唱しました(図A)。

               ◆ 図A 「活性酸素消去システム」 ◆



その後、植物生葉in vivoで、活性酸素が生成する速度を評価する系を構築し、光合成にとって必要以上の光エネルギーが供給される強光、あるいは光合成が抑制される低CO2条件下、予想されたように活性酸素の生成が促進されることを見出し、環境ストレス下、植物が活性酸素ストレスを被ることを示しました。

また、上記の活性酸素消去システムを、原核藻類・ラン藻、真核藻類・緑藻に見出し、酸素発生型光合成生物の進化において活性酸素生成は不可避であり、消去システムの獲得は不可欠であったことを示しております。